追悼 古井由吉先生〜「杳子」に描かれる大人の発達障害女性

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新型コロナウイルスの話題に埋もれて気付くのが遅れましたが、先日、作家の古井由吉先生(リンクはWikipedia)が亡くなったそうです。

(いらすとやから持ってきたのは、若干似てる、島崎藤村です)

古井先生はドイツ文学者

 古井先生は小説家であり、また、ドイツ文学者です。
 私は古井先生の作品を読み、

    嫁汗「この文体を作ったのがドイツ文学なのか」

と感銘を受けたことが、東大でドイツ語を第二外国語にしたきっかけになったと思います。

古井先生の代表作の『杳子・妻隠』

 古井先生は代表作の『杳子・妻隠』(ようこ・つまごみ)で芥川賞を取っています。この作品は、ピースの又吉さんもお気に入りの20冊(NAVERへのリンク)の1冊に選んでいた様です。

 個人的に好きな作品で、かつ一発達障害女性として共感するところが非常に多かった作品なので、今回記事にしようと思いました。「精神的な病気のヒロイン」ということなのですが、発達障害だろうと思われます。以前、宇多パパにも読む様に強く勧めて貸しました。

本書で描かれる赤裸々な発達障害女性

 冒頭部から分かりみが強いのですが、大学生男子の主人公が、杳子という女性に出会う最初のシーン。発達障害の感覚過敏だろうなぁと思われます。
 登山で疲れて刺激を受けやすい状況で、感覚過敏になってしまった、と。静かにパニックを起こしていたのでしょう。ヒロインは、ずっと座り込んでボーッとしていたと言います。
 私の様にパニックで泣き叫んだり逃げたりする人もいますが、オーバーフローして静かにパニックに陥っている人も居ます。

 また、喫茶店でいつもの席が使用されているだけで混乱するというのはアスペルガー者として理解できます。いつもと違うことに弱いのはアスペルガーの特徴です。(私自身、近所でも、いつもと違う道を通るだけで混乱してパニックを起こすことがあります。)

 ほかにも、彼女の身体描写で、冷んやりと、肌を合わせても孤独感のある、などといった描写がありますが、多分彼女は緊張していたのでしょう。発達障害者は自律神経が弱い人が多いため、不安や緊張で一気に冷えてくることもあります。

発達障害女性をパートナー目線で描き切った良作!

 杳子の存在は、私からすると違和感なく読めるのですが、健常者の方からすると違和感満点なのでしょう。

 これだけ発達障害女性を描き切っている、しかも当事者ではなくてパートナーとして描いた作品もなかなか無いだろうと思います。

 もし、発達障害(アスペルガー的な)の世界を覗いてみたい方がいらっしゃれば、「杳子」の世界に足を踏み入れてみることをお勧めいたします。濃密な世界が、あなたをひっそりとお待ちしている事でしょう。

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古井先生は、こちらの作品もオススメです。短編で読みやすいです。

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